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第32話 前の私は、この人の何が好きだったのでしょう

last update publish date: 2026-10-16 20:31:30

第32話 前の私は、この人の何が好きだったのでしょう

翌朝。

冬薔薇を見に行く約束をしていたにもかかわらず、リゼットは朝食の時間になっても食堂へ現れなかった。

具合が悪くなったわけではない。

寝坊でもない。

目はとっくに覚めていた。

ただ。

寝台の上で。

革張りの記憶帳を開いたまま。

動けなくなっていた。

「……多すぎない?」

誰に言うでもなく。

呟く。

頁。

また頁。

ヴァルド。

公爵様。

公爵様。

ヴァルド。

とにかく。

この男の話ばかりだった。

もちろん。

北方

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